自然の館
海辺に行くとよく見かける右の看板。(写真をクリックすると大きく表示されます)
私たちは、子供たちに絵本や写真だけではなく、
実際に手にして生物の形状、生態を感じてもらうことで、
海の生物の多様性を理解し、海の環境や生物に関心を持ってほしいと願う者ですが、
この看板を見た人たちは、どう思うのでしょうか。
採ってはいけない、持ってもいけないと言う表現は、子を持つ親たちに、
泳ぐだけであればプールのほうが良い、触れない動植物であれば水族館のほうが良いといった印象を与え、
結果的に感性豊かな子供たちを海から遠ざけ、将来の海の担い手を減らす原因にもなっているように感じます。
この看板の目的は、漁業法や漁業調整規則に定める免許を得ずして、
第1種共同漁業権である定着性動植物の捕獲を禁じる警告でしょうが、一方的な漁業権や罰則の掲示は、
海のルール(法)を知らない一般の人に与える印象は、測り難いものになるでしょう。
このような威圧的な看板は望みませんが、知ってますか海のルールを、と問いかけるより、
海のルールを公報することが大切で、ここに一般市民ができる海辺での遊びについて、
子供たちにもわかるように、
海のルールを紹介していきますので、皆さんに理解いただければ幸いです。
海はいろいろな人たちに利用されます。防衛や保安、海上交通や輸送、漁業従事者、
レジャー利用者などが挙げられますが、私たちにとって身近なレジャーは、
海水浴、釣り、スノーケリングやダイビング、
サーフボード、ヨット、水上バイク、プレジャーボートなどがあり、
多種にわたり多くの人が利用します。
そのような遊びであっても、一つの海を多くの人が利用するにはルールが必要となります。
このページでは、海に住む動植物を採る(採捕)と言う行為について、
法律では一般の人が行う動植物の採捕を『遊漁』として記載されますが、
関係する法律を基に『遊漁』に関するルールを紹介していきます。
沿岸の海で魚介類(水産動植物)を採って生活する人たちには、
漁業に従事する漁師さんが居ます。
私たち市民が気軽に行う、海の動植物を採る(採捕)『遊漁』行為で、漁業関係者との間で良くトラブルが発生しますが、
両者は、一方だけの事情を押し付けるのではなく、
お互いの権利、利用目的やルールを理解し、海を共用しなければなりません。
漁業に関係するルール(法や規則)には、主にA~Dに挙げるものがあります。
(A)漁業法
漁業に関する法律で、漁業権を免許(福岡県知事が免許)するなど、水産庁所管の法律です。
(B)水産資源保護法
水産資源を保護する法律です。
(C)筑前海区漁業調整委員会指示事項
日本の海は、農林水産大臣により66の海区に分けられ、海区毎に置かれた漁業調整委員会により漁業を調整しています。
私たちが住む福津市が接する海は、
筑前海区と呼ばれ、その範囲は北九州から佐賀県境の沖合いにおよぶものになります。
海区漁業調整委員会は、漁業に関する制限などに関する指示を出すことが出来ます。
(D)福岡県漁業調整規則
(A)~(B)に基づき、福岡県知事が定める自治立法の規則(法)で、福岡県の実情に合わせ定められています。
福岡の海域では、この規則を守らなければなりません。
漁業とは、『水産動植物を採捕又は養殖する事業をいう。 漁業者とは、漁業を営む者(漁業法第二条)』と定義されており、 漁業法で定める漁業は、大きく分類すると次の(1)~(3)に分類されます。 (事業とは:営利を目的とした仕事です。)
(1)漁業権漁業
この漁業権は、都道府県知事が漁業協同組合(漁協)または協同組合連合会(漁連)や法人に免許され、
下記の3つの漁業ア~ウを営むことが出来ます。
ア、共同漁業(漁協または漁連に免許)
一定地区の漁民が特定の水域を共同に利用して営む漁業で、
漁協が制定する漁業権行使規則に基づき、
組合員の漁業者が行う漁業のことです。
イ、区画漁業(漁協または漁連、漁業者等に免許)
主に、一定水面区域で営む養殖業のことで、漁業者の他、漁協や法人でも営むことが出来ます。
ウ、定置漁業(漁業者等に免許)
水深27m以上の海域に設置される大型の定置網漁業(水深27m未満で行う定置網はア、
共同漁業に含まれる)で、地元漁民を含んだ法人でも設置可能です。
(2)許可漁業
この漁業は、農林水産大臣または都道府県知事が許可する漁業で、
許可された者が、許可された区域・期間等で行う漁業です。
※操業区域が共同漁業権を含む許可漁業もあります。
(3)自由漁業
大臣や知事の許可を必要とせず、着業できる漁業です。
注)漁業調整規則や委員会指示を遵守する必要があります。
ここまでが漁業法で定める漁業です。私たち一般市民は、この漁業はできません。
でもこのほかに、私たち一般市民でもできる
遊漁と言うものがあります。
(4)遊漁とは
これは免許されるものではなく、一般の市民が行える水生動植物の採捕に関する漁で、
営利を目的としない、主に釣り、潮干狩りなどのレジャーを目的としたものです。
でも、レジャーを目的とした『遊漁』であっても『漁業法』、
『水産資源保護法』、海区漁業調整委員会が定める『指示事項』や都道府県が定める『漁業調整規則』
を守らなければなりません。
これらルールに違反すると罰せられますので、特に注意が必要です。
水産庁が掲げる『遊漁の部屋』に『遊漁・海面利用の基本的ルール』が公示されています。
また福岡県でも『漁業と遊漁のルール』が公示されています。ご覧ください。
如何でしょうか、これまで漁業で行える業の分類や『遊漁』
ついて記載しましたが、
私たち市民が行う『遊漁』に際し、
特に関係する法は、前記の内、(1)漁業権漁業の『ア)共同漁業』と言うことになります。
では、共同漁業とはどんなものか、もう少し詳しく紹介します。
漁業権漁業の内、共同漁業が出来る特定の水域、魚種、漁法は福岡県知事が定め、
漁業協同組合に漁業権を免許する漁業です。
漁業協同組合に免許された漁業権内容は、福岡県漁業管理課で閲覧できますが、下記のようなものがあります。
(1)第1種共同漁業権
共同漁業で免許された特定の水面(地先沿岸水面のほぼ全域)を排他的に使用し、
定着性の高い水生動植物(藻類、貝類、ウニ、ナマコ、タコ、イセエビなど)を採捕する漁業。
水生動植物に魚類が入っていないことを覚えておいて下さい。
(2)第2種共同漁業権
小規模定置網や刺し網など、漁具を移動しないように敷設して魚類を採捕する漁業。
(3)第3種共同漁業権
地引網、地こぎ網などで魚類を採捕する漁業。
(4)第4種共同漁業権
瀬戸内や三重県などで行われる特殊漁法を利用した漁業。
(5)第5種共同漁業権
内水域(河川や湖沼)で行う漁業。
この漁業権によると、(2)第2種~(4)第4種の漁業権は、
私たち市民には馴染みの無い漁業権ですね。
従って、私たち市民が行う『遊漁』において、
特に注意して守らなければならない漁業権は、
共同漁業の内、第1種共同漁業権と第5種共同漁業権ということになります。
次に、採ってはいけない大きさなどを定める『水産資源保護法』や福岡県が定める『漁業調整規則』、を紹介します。
このルール(規則・法)の大半は、漁業を営む者に向けたルールですが、
この漁業調整規則の中には『遊漁』に向けたルールも記載されています。
ここでは、海水面域に限定(内水面を除く)し、
諸法の中から『遊漁』を行う際、
守らなければならない事項を抜粋して、行為別に記載していきますが、
注)このルールは、福岡県海域に適用されるもので、
他水域ではルールが異なる場合がありますので注意を。
興味のある方は、各法にアクセスし詳細をお読みください。
A, 漁具・道具・漁法について
使用可能なもの
◆手釣り、竿釣りで行う魚釣りに限る。
魚釣りとは、魚が自ら針についた餌を求め、釣る漁法と定義されています。
ルアーやイカ用餌木の使用は、魚が餌と思い、自ら食ってくるので魚釣りに該当します。
◆やすの使用
やすとは:魚などを突き刺す先端部と柄が固着したもので、柄を持って使用するものですが、以下は禁止されています。
(照明を利用するものは禁止:漁業調整規則第34条)
◆タモの使用
タモの使用は出来ますが、以下は禁止されていますので注意を。
(照明を利用するものは禁止:漁業調整規則第43条)
◆スノーケリングでやすやタモを使用した魚採り。(魚に限ります)
水中銃の使用は禁止。やすにゴムを装備したものも禁止している漁協もあります。
禁止されているもの
◆筑前海区における空つり縄の禁止
※空つり縄とは、
スマル(錨状の金具)等を用いて海底を引きずる漁法で、福岡県では、餌を付けない延縄を指します。
但し、ひっかけ釣りは遊漁の範囲で可能
と言う事でしたので削除しました。
◆定置網周辺での魚釣り。
◆生簀の中での釣り。
刑法:窃盗罪が適用されますので特に注意を。
◆トローリング。(ひき縄とも呼ばれます。)
◆船舶を利用した投げ網での魚の捕獲。
◆漁業操業活動妨害行為
漁船航行妨害、漁具に損傷を与える行為の禁止などがあります。
◆潜水器具(簡易潜水器具含む)を使用した魚の捕獲。
◆かごや筒状漁具を使用した魚の捕獲。
◆水中銃を使用した魚の捕獲。
◆水中に電流を通じて魚を採る漁法。
◆照明を使用する鉾突き漁法。
やす・タモを使用した場合も含む。
◆干潟において照明を利用した漁法。(有明海を除く。)
◆爆発物を用いて捕獲する漁法。
(水産資源保護法)
◆有毒物を用いて捕獲する漁法。
(水産資源保護法)
B, 特定魚種の大きさについて
禁止されているもの
・うなぎ:21cm以下の捕獲
・ぶり(もじゃこ):15cm以下の捕獲
●貝類 :アワビ、トコブシ、サザエ、岩ガキ、アサリなど
●水産動物:イセエビ、シャコ、タコ、ナマコ、ウニ、カメノテ、イソギンチャク、ヒトデなど。
●藻類 :ワカメ、コンブ、ヒジキ、テングサ、モズクなど。
A, 漁具・道具・漁法について
使用可能なもの
◆徒手採捕での漁法は可能
徒手採捕とは、所謂手づかみで採ること、とされていますが、以下の漁具の使用は可能です。
◆やす、タモ、手網(照明を使用するものを除く。)
◆は具(熊手、じょれんを含む)
禁止されているもの
◆前記、使用可能なもの以外。
潜水器具(簡易潜水器具含む)を使用した水産動植物の採捕は禁止、特に注意を!
B, 特定動植物の大きさについて
禁止されているもの
以下は、漁業でも採捕を禁止されています。
・アサリ:殻長3cm以下。
・ハマグリ:殻長4cm以下。
・赤貝:殻長7cm以下。
・真ダコ:100g以下。
(関門海峡では委員会指示に基づき、一部400g未満のマダコが採捕禁止となっている海域があります。)
・ガザミ:13cm未満。
・アワビ:10cm以下。
C, 採捕の禁止期間について
特定動物の採捕禁止期間
以下の期間は、漁業でも採捕を禁止されています。
・ナマコ:一部変更になりました。
北九州市周辺海域(筑共第16~21号):5月1日~10月31日
それ以外の海域(筑共第1号~15号) :4月1日~9月30日
・ハマグリ:6月1日~8月31日の間。
(4㎝以下のハマグリは周年禁止)
・アワビ:11月1日~12月20日の間。
◆ナマコ採り。
改正漁業法で、ナマコ、アワビは特定水産動植物に指定されました。
漁業権及び漁業許可に基づかない採捕は一切禁止。(最高で懲役3年、罰金3000万円の罰則)
◆引っかけ釣りは遊漁の範囲であれば可能、との事で削除しました。
◆3cm以下のアサリや4cm以下のハマグリ採り。
(規則:大きさの制限,)
◆アサリ、ハマグリなど貝類の採取。
(規則:第1種漁業権)
◆カマを棒先に固定したワカメ採り。
(規則:漁具の制限、第1種漁業権)
※浜に打ち上げられている海藻類について、
浜に打ち上げられている寄り藻、
流れ藻であっても共同漁業権の対象となるため、採捕禁止。との事で修正しました。
◆夜間照明を使用した干潟での水産動物の捕獲。
(規則:漁法の制限)
◆汽水域でのモクズガニ(毛ガニ)採りについて。
※モクズガニが漁業権対象種となっている内水面は、矢部川、筑後川、豊前海の一部河川のみで、
筑前海区では制限は無いそうで修正しました。
・空き缶、ビニール袋など、ゴミは持ち帰り処分しましょう。
・釣道具、糸、針、余った撒き餌など、不要なものは海に捨てず、持ち帰り処分しましょう。
・イカ墨や撒き餌の跡は、水を流し清掃しましょう。
・小さな魚や不要な魚は、置き去りせず、海にリリースしましょう。
・釣り過ぎ、採り過ぎは、節度を持って臨みましょう。
・車両は、漁業関係者の操業に支障のない場所や決められた場所に駐車しましょう。
・進入禁止の柵や漁業関係者専用の場所に注意し、許された場所で遊びましょう。